「何げに」考

以下は、「何げに」といふ言葉は間違つてゐる、といふことを説明しようと思つて書いたものですが、文法に詳しくない僕がそんなことを企てるのは土臺無理なことでした。いつかもう少し勉強し直して、再檢討しようと思ひますが、とりあへずアップします。

●「げ」には、形容詞に付いて、その形容詞を形容動詞化する働きがあります。この点で、「げ」は、「さう」に似てゐます。

ただし「げ」は、「さう」と違つて、付く言葉が限られてゐるやうです。例へば、「長さうだ」とはいふけれど、「長げだ」といふのはやや不自然であつたりなど。

●また「げ」は、名詞に付くこともあります。「得意げ」など。ただこの場合は、形容動詞化できる名詞のみに限られます(「得意」に「だ」を付けて、「得意だ」―「得意な種目」といつたやうに)。形容動詞化出來ない名詞に付けた場合、例へば「春げだ」「舞臺げだ」「ブロックげだ」などの言葉は、不自然です。

●「何」は名詞であり、「何だ」という言葉が、形容動詞としては不自然である以上(「何なもの」という言ひ方は不自然)、「何げなく」の「げ」は形容詞・名詞を形容動詞化する「げ」とは違ふものなのだと思ひます。「何げなく」は「何といふ氣もなく」が縮まつてできた、それでひとつの形容詞(の連用形)です。「何げだ」といふ形容動詞が成立しない以上、その活用形としての「何げに」も成立し得ないでせう。

●また「何げに」をもしも「何氣なく」の意味で使つてゐるのだとしたら、「何といふ氣もなく」の否定部分「なく」を省いてしまつてゐるのですから、この點でも間違つてゐます。

2007年8月16日初囘脱稿

2007年9月11日 假名遣ひの間違ひを訂正しました。

2007年10月4日 假名遣ひの間違ひを訂正しました。

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